
IR・投資家情報

次のステージヘ向け Keep transformingで
新たな成長を実現していきます
外部環境の変化と見据えるべきリスク
2021年度も2020年度に引き続き、一定程度の新型コロナウイルス感染症拡大の影響があったことは否めません。感染状況も落ち着きを見せ、建設工事の再開やインフラ整備に関わる動きもありましたが、計画どおりに業績を実現させることはできませんでした。
現在の建設業界は大きな変革期を迎えています。国内に目を向けると、近年では建築工事より土木工事が活発となり、特に公共事業としての高速道路や鉄道などの維持・修繕工事が活発になり始めています。これまで日本を支えてきた全国的な交通網を、これからも利用していくための維持・修繕への取り組みは、社会的にも大いに意義のある仕事です。また、激甚化する災害に向けた各種インフラや建築物の強化、保守という課題もいたるところで発生しています。経済的にはインフレや海外の不透明な動きがあることは確かですが、当社としてはしっかりとマーケットの中でポジションを築くことができていると認識しており、このポジションを高めることで事業の成長と、当社が提供する社会的な価値の両面を拡大させていきます。
一方で懸念すべきリスクもあります。原材料となる鋼材の価格の高騰については、価格への転嫁を進めるなどして、各種リスクを回避・軽減させています。サプライチェーンの面では海外における情勢は見通しが立てにくい部分もあり、生産、調達についてはできる限り複線化、最適化をするなどの仕組みを整え、今まさに勢いに乗りつつある当社の事業の拡大を減速させないよう取り組みを進めています。
2022年度における事業環境と取り組み
次世代足場「Iqシステム」
国内の事業については、やはり一部の工事で中断や延期の影響があります。しかし、次世代足場「Iqシステム」への市場からの関心は依然として高く、販売とレンタルがともに好調です。レンタルでは前年度に過去最高の稼働率を記録しており、販売においては新規購入、追加購入、従来足場からの入替案件のいずれも堅調に推移させることができています。足元の状況として、ポイントになる「Iqシステム」の生産体制を1.6倍まで拡大、最終的には2倍程度まで増やす計画で準備を進めています。農業用高機能グリーンハウスの建設工事は、コロナ禍での外国人就労者不足の影響もあり、買い控えが発生しています。需要の回復までには半年から1年ほど時間を要すると考えていますが、需要の回復時に備えて、引き続き実製品を用いた実証栽培による栽培データの収集など、準備を進めてまいります。
海外の事業における状況・市況としては、各国で持ち直しの動きが見られようになってきました。ベトナムではロックダウンが解除されたことで、計画どおりの製造活動が行えています。フィリピン国内では鉄道インフラの整備に向けたプロジェクトが進行しており、工事も本格化しています。韓国においては、政権交代の影響もあり、建設、特に足場に対する安全への意識が高まっています。日本同様に安全面にしっかりと予算をかけており、安全性の高い「Iqシステム」の需要が増加することが想定されます。このように、各国で事業活動を行える環境が順調に整ってきています。また、別の側面では為替問題があります。当社事業にとって海外事業におけるリスクと機会というものは必ずしも表裏という状況ではありませんが、それぞれに対策を進め、事業拡大の機会を最大化できるよう取り組んでいきます。「次世代足場におけるトップシェアの維持・拡大」「維持・修繕工事へと移行する市場への対応」「仮設部門以外における事業の育成」「海外事業基盤の収益成長」についてはそれぞれ取り組みを進めることができたと認識しています。
売上高の推移
中期経営計画におけるトランスフォームの意味
昨年からスタートした中期経営計画はアグレッシブな計画です。この計画達成のための前提条件として、当社自身の変革、トランスフォームが必要となります。この1年はトランスフォームの過程ということもあり、先ほども述べたとおり、依然として外部環境から受ける影響も大きく、業績を伸ばすことができませんでした。最終年度の業績計画からみれば、進行している2022年度の目標数字はいささか保守的なものといってもよいかもしれません。しかし、2年目、3年目にかけてこのトランスフォームを成し遂げることで、着実に業績目標を達成できると確信しています。
当社が目指しているトランスフォームとは、これまでブラッシュアップしてきた事業基盤を、外部環境に左右されない、自ら需要を生み出すことができる新たな姿である「プラットフォーム」に変貌させ、安定的に収益を生み出せるようになることです。これまで軽仮設業界は、大手の建設会社によるマクロな状況・市況があり、そこにおける建設投資がどれだけ高いか、低いかで私たち自身の経営数値がみえてくるという状況でした。また、同様の理由で資本市場からの評価である株価を見ても、本来の価値を評価してもらえているとは到底思えず、あまりにも未来を見てもらえていないと感じています。そこで、これから当社が持続的な成長を目指していくにあたって、こういった外部環境に左右され続けている状況から抜け出さなければなりません。そのために必要なことは、当社自身で需要を生み出す「プラットフォーム」を作り上げることだと結論づけました。外部環境の影響を過度に受けない安定的な収益を生むビジネスモデルへの転換、これが当社のトランスフォームです。
当社が提供するプラットフォームとは、これまでに当社がブラッシュアップし続けてきた事業基盤そのものです。「開発・製造」「販売」「レンタル」「設計・施工」「管理・物流」の機能を有しており、これらの機能を当社だけで利用するのではなく顧客に対して開放します。顧客はタカミヤの仮設事業のインフラを自社の事業基盤として使用できるようになります。例えば、今後期待される大阪湾岸エリアの開発に関連するプロジェクトへ、関西エリア以外の顧客が、タカミヤの機材センター、物流網、施工ネットワークを利用することで参入を実現します。つまり、顧客は従来から行っているビジネスの規模やエリア、範囲の拡大ができるようになります。当社の事業基盤、タカミヤそのものを、お客様にとって高付加価値を提供できる魅力あるプラットフォームにしていくことが、我々の目指すトランスフォームのあるべき姿です。そして、このトランスフォームの達成のカギとなるのが「DX」です。DXの本質とは、デジタル技術を利用して業務や作業を合理化、効率化することです。当社がいる建設業界では、以前と比べてデジタル化やDXは進んでいますが、まだまだアナログ的なところが多いのが現状です。このアナログが業務の多数派を占める状態が、資本市場から今の時代や環境にあったビジネスではないとみられている要因だと考えています。実際に資本市場では特にグロース株においてDX関連の企業に注目があつまっています。成長への期待感は高く、市場からの評価も上がりやすい時代、タイミングといえるでしょう。
中期経営計画の進捗状況
当社としてはDXを推進することで、各業務の効率化を図るだけではなく、お客様へ提供するサービスの利便性を向上させ、トランスフォームを加速させていきます。
プラットフォームを作り上げ、トランスフォームを達成するためには、ステークホルダーであるお客様やパートナー、ご支援いただける株主をいかに増やすことができるかにかかっています。そのためには当社が現在取り組んでいることをお客様やパートナーへしっかり伝えて、共感してもらうことが必要になります。プラットフォームの拡大は共感なしでは実現できません。多くのパートナーとプラットフォームを共有することが、私の描くタカミヤの、そして建設業界の未来です。
トランスフォーム実現に向けたドライバーは「人」と「DX」
このトランスフォームを実現するために最も必要なのは目標をもちビジョンを掲げ、それを実行していく「人」を集め、育てていくことです。闇雲に採用すればいいというわけではありません。集まってくれても、すぐに離れてしまっては意味がありません。そこで当社では2018年から賃貸資産への投資比率を下げ、3年から4年かけて人の教育と仕組みづくりに投資を行ってきました。これは現在も継続しており、働き方やオフィス環境をDXの力で「見える化」しています。自分たちが働く生産性を高めることをせずに、お客様に提供できる価値が上がるはずがないのです。私たち自身の効率を上げ、お客様へ届ける付加価値を高めていく。これによって初めて収益性というものを向上させていくことができるわけです。より効率よく足場を生産し、効率よく使ってもらう。運用率を上げるためにもDXは必要です。それによってさらに働く人の効率も上がっていく。中期経営計画の1年目はまずこの土台づくりでした。これについてはかなりの手応えを感じています。着実に2年目、3年目には結果として数字が見えてくることでしょう。
私は「効率を上げ、生産性を上げ、そして休みたい人は休みなさい。もっと稼ぎたい人はもっとやりましょう」ということ、それから「Keep Transforming」と言い続けてきました。一定の成果に対して正しく報いる。自分たちにもしっかりとリターンがあるということを実感しなければ、DXという変化は実現しないでしょう。会社としての利益と社員が受け取る利益というものは方向性として一致しなければなりません。DXをすることが目的ではなくて、それぞれの目的を実現するためにDXが必要なのです。これは新型コロナウイルス感染拡大によって、リモートワークが加速したことも後押しになりました。自分が働きたいところで働く。そこで頑張った分だけリターンがある。そんな時に会社は「憩いの場」であってほしいと思っています。リモートワークで働くことによる孤独感や疎外感などはどうしても出てしまいます。今後は、精神面や体調面のサポート、コミュニケーション不足の解消を会社という場が担っていくことになるでしょう。今会社にはデジタルサイネージをいくつか用意しています。各拠点の情報が全国区でどこからでもモニターできる形になっています。自由に自分の意志で、選んで働く。これがとても重要です。昨年、今年で新卒採用者の離職率は大幅に低下しました。変化の真っ只中にある当社が今のデジタルネイティブ世代にとって、環境としても仕事としても魅力的に感じられていることの証明であると思います。
好調であったレンタル事業の売上を追いかけて、賃貸資産への投資にもっと力を入れたほうがよいのではないかと言われることもありました。しかし、私はそれでは先がないと考え、人材投資を推し進めてきました。私たちが実現したい未来に向けて、今まさに土台は整いました。
オフィス環境の改革
タカミヤの成長を支えるサステナビリティとガバナンス
当社も2022年4月から東京証券取引所において「プライム市場」へ移行しました。私はやはり当社はプライム市場にいなければならないと考えています。トランスフォームの実現、持続的な企業成長のためには、海外の機関投資家を含めて幅広い資金調達が必要となります。そのためにも環境、社会、ガバナンスといういわゆるESGへの取り組みにも十分に配慮、注力していく必要があります。そして、成長のために必要なことに一つひとつ丁寧に対応していきます。今回ガバナンスの体制を監査等委員会設置会社に変更し、新たに監査等委員として酒谷氏、上甲氏、加藤氏の3名に社外・独立のメンバーとしてボードに加わっていただきました。できるだけ厳しい意見をいただける方にご参画いただけたと思っています。
監査等委員
コーポレートガバナンス・コードをはじめとした外部からの要請というものは、タカミヤが今後どうしたらよいか、どうしたらこの先も成長をし続けられるかという前向きな材料として捉えています。TCFDに関する環境関連の課題、取り組みや女性活躍推進についても同様です。当社に限らず、世界の流れについていくことができていない、やりづらいと感じている企業があるとすれば、それは時代・環境への対応が十分にできていない、時流に乗り切れていないのではないかと考えます。課題と言われるものは成長の芽として捉え、前向きに取り組んでいきたいと私は考えています。
ステークホルダーの皆様へ
まず社員の皆さん。私は今の時代に働くということは、選択肢をたくさん持ちながら一人ひとりが幸せになって、自分が利益を上げて、最終的に会社や社会にどのように貢献していくのかをそれぞれで考えてほしいと思います。そして1番大切なことは、それを楽しんでください。私は皆さんと一緒にこの大きな変化、トランスフォームを実現していきたいと考えています。
Takamiya Lab. West
パートナーの皆さん。タカミヤは大きくトランスフォームしようとしています。これまでの業界の常識を覆し、新たな仮設事業のインフラとなる「プラットフォーム」を展開します。このプラットフォームは、パートナーの皆さんが使いたくなるような、従来では考えられない高付加価値サービスを提供し、皆さんの事業収益を改善し、ビシネスの可能性を広げる礎となります。劇的に変化する当社に対応するのは大変だと感じられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、このトランスフォームは当社だけでなく、これからの業界を変えていくことになります。私たち自身だけで完成するものではありませんから、できるだけ多くのパートナーの皆さんとともにこのプラットフォームを拡大していきたいと考えています。
株主の皆様におかれましては、業績面でご心配をおかけした時期もあり、大変申し訳ございません。当社はまだまだ足場の会社と思われているのが現状です。しかし、トランスフォームのための基礎固めは着実に進んでいます。プラットフォームビジネスは当社の収益構造を根本から変えることになります。このプラットフォームに関する情報は随時公開してまいります。さらに拡充していく新たなビジネス、プラットフォームビジネスにご期待いただき、長期的な視点で引き続きご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
2022年12月
代表取締役会長 兼 社長
髙宮 一雅
統合報告書2022 (PDF:7.7MB)
タカミヤの戦略とその現況について、より詳しく知りたい方はこちらの資料をご覧ください。
